Lesson2-1.怒りの脳メカニズム

Lesson1では、怒りの性質や本質、見方を変えればポジティブになりえることを学びました。
今回は脳科学的な視点から、怒りの感情が発生するメカニズムについてみていきましょう。まずは、人間が快・不快と感じるのは脳の扁桃体であることから学んでいきます。

快・不快を決めるのは「扁桃体」

人の快・不快を決めるのは脳の扁桃体です。
しかし、扁桃体が不快と判断しても、「怒り」の感情は、すぐには生まれません。
つまり、不快だと感じても、怒るか怒らないかはまだ決まっておらず、怒るときもあれば、怒らないときもあるのです。

なぜなら感情をコントロールすることで、怒りを感情としてあらわにすることを防ぐ事ができるからです。

感情をコントロールすることで、怒りを防げる

不快だと感じても、感情をコントロールすることで、怒りを防ぐことができます。
逆に感情をコントロールしなければ、そのまま怒りが感情となって現れてしまいます。相手を罵倒したり、攻撃的な行動に出てしまうのです。

では、このコントロールを行っているのは脳のどの部分なのでしょうか。

怒る・怒らないを決めるのは「前頭葉」

このような感情コントロールを担うのが脳の前頭葉です。
前頭葉は、感情、思考、理性、やる気などを司ります。

快に感じたら「嬉しい」「楽しい」など快の言動に、
不快であれば「寂しい」「不安」など不快な言動になります。

このような快や不快の感情を表せるように、前頭葉がコントロールしているのです。

つまり扁桃体が不快の判断をしても、前頭葉が感情をコントロールできれば、怒らずにいることができるのです。

このように前頭葉次第で、怒るか怒らないかが決まります
感情を上手に制御できれば怒らないし、制御できなければ怒り出してしまうのです。

脳に鉄棒が貫通する事故で判明した、前頭葉の働き

1人の患者の症例で、前頭葉が感情のコントロールを担うことが分かりました。その患者は、頭に鉄棒が貫通する事故に遭遇しました。
幸い命に別状はなく、社会復帰もできましたが、脳の前頭葉が破損してしまったのです。

前頭葉が壊れてしまったため、その患者は怒りっぽくなり、けんかやトラブルが耐えなくなりました。
このことから前頭葉に感情をコントロールする能力があることが分かったのです。

ではこのように感情コントロールが不能になるのはどんな状態なのでしょうか。
みていきましょう。

強い不快感が、感情コントロールを不能にする

あまりにも衝撃的な出来事がおき、強い不快感やストレスをもつと、扁桃体が過剰に反応してしまい、感情のコントロールは不能になってしまいます。
このとき、扁桃体から脳の各分野に怒りを表す命令が伝わり怒りが生まれ、脳が怒りにとらわれた状態となります。

こうなってしまうともうコントロールができず、正常な判断ができないままに怒りに飲み込まれてしまうのです。

怒ると興奮した状態になり、暴言や暴力行為に及ぶ

この怒りの感情が、ことばを司る言語野に伝わると、暴言を吐くようになります。
また、身体の動きを司る運動連合野に伝わると、相手への暴力行為に及んだりします。身体の症状としては、脈が速くなり、血圧があがるなど、興奮した状態になります。
怒った人は皆このような状態に陥っているので、
こうならないためにも前頭葉でしっかりコントロールするアンガーバランス・マネジメントを身につけていきましょう。

まとめ

快・不快を決めるのは脳の扁桃体ですが、その快・不快に対し、感情をコントロールするのは前頭葉の役目です。

そして強い不快感やストレスが、感情を制御不能にし、怒りの感情が生まれるのです。
怒ると興奮した状態になり、暴言や暴力行為に及んでしまいます。

怒りの感情をもったときや他者から受けたとき、その怒りに飲み込まれないためには、脳のしくみを冷静に認識し、対処することが大切です。