Lesson1-1.怒りは自分や相手の情動を理解するために不可欠

実は怒りの感情には、不安や焦りなどの気持ちが隠されています。
怒りの裏側に別の感情が隠されているので、怒りの感情は複雑なものなのです。

しかし複雑だからこそ、怒りの感情を理解すれば、
自分だけでなく他者の感情に対して深い理解を示すことができます。

ではまず、そもそも怒りの感情とはなんなのか?
怒りの正体を見ていきましょう。

怒りの感情とは

怒りの感情は、私たちに何らかのサインを送ってくれる感情です。

たとえば、辛さ、困り感、不安や焦りなど。

怒りの感情が生じたとき、最初はそのインパクトが大きく、
驚いたり冷静でいられなかったりするかもしれません。

しかし、一旦落ちついて怒りの裏側に隠れた感情と向き合いましょう。

向き合う事で「怒り」の感情は、「漠然とした恐ろしいもの」から
自分や相手の感情を理解する重要な手がかり」に変わります。

怒りの正体は氷山の下に隠されている!

氷山モデルとは

氷山の9割は海の中に隠れていて、海面から出ているのは1割ほど。

このように表に出ている1割の事実だけでなく、裏に隠れた9割の要素に目を向けることが大切です。この考えを「氷山モデル」といいます。

怒りは2番目の感情

怒りの正体は、まさにこの氷山モデルとなっています。
怒りの感情の裏には不安、恐れ、悲しみ、嫉妬、焦りなどのマイナスな感情があり、
それらが適切に処理されない結果、「怒り」となって表われるのです。

怒りは以下の順番で起こります。

  1. 不安、恐れ、悲しみ、嫉妬、焦りなどのマイナスな感情が生じる
  2. マイナスの感情が解消されない
  3. 怒りの感情となって現れる

この一連の仕組みが、怒りの感情が生まれる正体です。

一次感情と二次感情

  • 一次感情1番目に起こる感情)
    • 不安、焦り、嫉妬、恐れ、悲しみ、寂しさ等のネガティブな感情
  • 二次感情(1番目を基に起こる、2番目の感情)
    • 怒りの感情

このように、怒りの感情の前に起こる不安や恐れなどの感情を一次感情といいます。
一次感情が生じた後に二次感情として怒りの感情が生まれるのです。

複雑なのは深い意味があるから

一次感情をみて分かるように、怒りの感情にはいくつもの感情(不安、恐れ、焦り)が隠れています。
このように、怒りの感情は複雑です。

しかし、怒りは複雑であるからこそ深い意味のある感情だといえます。
複雑な怒りの感情に向き合うということは、他人の感情に深い理解を示せるようになるという可能性も大きく含んでいるのです。

「怒り」への特効薬は「感情コントロール」

他者の怒りの感情と接するときは、自分の感情をコントロールすることが大切です。
なぜなら自分の感情を把握出来なければ、他者の怒りに巻き込まれてしまうからです

それに加え、他者の怒りの感情に対して正しい対処をするためにも、自分の感情を制御することは重要です。
自分の感情をコントロールするためには「自己理解を深める」必要がありますので、学んでいきましょう。

自己理解の3ステップ

まずは自己理解が出来ないと他者の気持ちを理解することなど到底出来ません。
そのためには、日常生活の中で自分自身の怒りに意識を向けることが大切です。

以下で自己理解を深める3ステップをお伝えします。
とても簡単な内容ですので、明日から日常に取り入れてみましょう。

1.怒りの感情を認める

例:「今私はイライラした状態なんだ。」

自分が怒ったりイライラしたとき、その感情を認識します。
このとき気をつけたいのは「怒りの感情は悪いものだ」という否定をしないことです。
なぜなら感情を否定することは、自分を否定することに繋がるからです。
自分を認め満たされた状態でなければ、誰かのことを助けることは出来ません

2.原因を把握する

例:「思い切って悩みを相談したけど笑ってあしらわれて、イライラしたんだよね。」

何によって怒りの感情が生まれたかを思い返してみましょう。
相手に何らかの期待があるのが多くのケースです。
その期待と現実のギャップを認識しましょう。

3.本当の気持ちに向き合う

例:「イライラしていたけど、本当は悩みを親身に聞いて欲しくて、悲しかったんだ。」

怒りの背景にある本当の感情を見つけましょう。
不安、焦り、嫉妬、恐れ、悲しみ、寂しさ等のマイナスな感情から怒りの感情は生まれます。

自己理解が他者を助ける

人は自分の感情を理解できて初めて他者理解ができます

自己理解をすることで、

  • 相手の怒りに振り回されなくなる
  • 適切なコミュニケーションをとることができる
  • 相手を助けることができる
  • 自分の感情をコントロールすることができる
  • 自分と相手に対し肯定的になる

以上のことが可能になります。

自己理解ができるようになると、自ずと相手の気持ちもわかるようになってきます。
そして、他者の怒りの裏側に隠された不安や焦りなどの感情を理解することができるようになると、
怒りに対し適切な対処ができるようになるのです

このように怒りは自分や相手の情動を理解するために不可欠な感情です。
怒りの感情が生じたら、その裏側にどんな感情が隠れているかに意識を向けることを忘れないでおきましょう。

次のページでは、人が怒ってしまう原因を学んでいきます。