前回のページでは、怒りの正体は不安や寂しさなどのネガティブな感情から生まれるもので、
その対処法として、怒りの感情をなぜ抱いたのか、理由を内省することを学びました。
今回は「怒りの感情は自らが選択した感情である」ということを学んでいきましょう。
何かあるとすぐ怒ってしまう人もいれば、怒った顔を見たことがないくらい温和な人もいます。
なぜ人は怒ってしまうのでしょうか。
まずは人が怒ってしまう原因から見ていきましょう。

怒ってしまう理由4つ
怒ってしまう原因は以下の4パターンに分けられます。
- 自分で「怒る」という感情を選んでいる
- 自分ルールの遵守を相手にも求めてしまう
- 自己肯定感が低い
- 心のゆとりがない
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
【怒る原因①】自分で「怒る」という感情を選んでいる

イライラするときには、対象があるからイライラします。
対象が何もなければ怒ることはできません。
では、怒る対象とはどのようなものが挙げられるでしょうか。
例えば
- 「友人が待ち合わせの時間に遅れた」
- 「部下の仕事にミスが多い」
- 「仕事がスムーズに進まない」
- 「家族が片付けをしない」
- 「子どもが言うことを聞かない」
など何かしらの対象があることで、初めて生まれるのが怒りやイライラの感情です。
周りがイライラを運んでくるのではない
ポイントは「外部がイライラを与えてくるのではない」ということです。
つまり怒りの感情は周りのせいではなく、「自分が選択しただけ」なのだとまず知ることが大切なのです。
例えば、家族が片付けをしないで困っているときを考えてみると、その事象に対して
- 怒って解決する人
- 怒らないで解決する人
が存在します。
なぜ2通りの人が存在するかというと、出来事に対する捉え方が異なるからなのです。
同じ出来事なのに異なる視点
先ほどの例で、両者の気持ちを想像してみましょう。
怒って解決する人の場合
「家族が自分の思い通りに動かないから、イライラする。本当はちゃんと片付けをして欲しい。私ばっかり片付けて、私の家族は思いやりがないのね。」
→ 自分は変わらず、相手に変わって欲しいという気持ち
怒らず解決する人の場合
「どうすれば片付けられるシステムを作れるだろう。なるほど、物の帰り道が曖昧だから片付けられないのか。じゃあ分類できるようにカラーボックスを新調して名前を書いて、どこにしまえば良いか一目で分かるようにしよう。そして、片付け終わってからテレビを見るというルールにしよう。」
→ 相手に期待せず、問題解決のために改善案を出したり、自分が変わろうとする気持ち
このように、状況があなたを怒らせるのではありません。
あなたは自らの意思で怒りの感情を選んでいるのです。
怒りの感情は自らが生み出している
怒りの感情は自分から生まれるという認識は、自分の感情をコントロールしたり、誰かを指導したりする時に非常に重要な感覚です。
なぜかというと、自分の感情の制御も誰かへの指導も、「やらされている」という受け身の姿勢では成り立たないからです。
どちらも、自分の意思があって初めて成立します。
このように、自分や他者の感情を制御したり、管理したりするためには「自分の感情は自ら選んでいる」という感覚を持つことが大切です。
【怒る原因②】自分ルールの遵守を相手にも求めてしまう

人が怒ってしまう2つめの理由に、自分ルールを相手にも押しつけてしまうことが挙げられます。
しかし、自分のルールだけが全てではありませんので、自分と他人の価値観は別物なのです。
自分のルールは絶対ではない
「自分の中のルール=相手のルール」だと思い込み、自分が正しいと思うことを相手にも求めてしまって生じる怒りもあります。
例えば、「すれ違いざまにぶつかってしまったら、謝るべき」という自分ルールがあったとしましょう。
この場合、相手がぶつかってきても謝らなかったら、あなたは怒りを覚えるかもしれません。
しかし、「軽く当たっただけで、それより今は仕事のことで頭がいっぱい」と相手は思っていたとしたらどうでしょうか。
つまり、自分の見ている世界を相手も必ず見ているとは限らないということです。
自分と他人の見ている世界は異なる
「~でなければならない」「~すべき」
というような、自分が正しいと思う決まりは誰しも持っていますが、自分に課す決まりが厳しい人ほど、他人に怒りの感情を抱きやすい傾向にあります。
怒りの感情というのは、自分と他人の価値観が違う事実に気づかないまま、自分のルールに他人を当てはめてしまうことで生まれるのです。
【怒る原因③】自己肯定感が低い
人が怒ってしまう3つめの理由は、自己肯定感が低いという要因があげられます。
自己肯定感というのは、自身の存在価値を肯定できる心のことです。
自己肯定感を高めるためには、自分で自分を満たすことが大切です。
自己肯定感の低い人の6つの特徴
- 自分の本音を無視する
- 周りに合わせる
- 自分を犠牲にする
- 自分や他人に対し、否定的になる
- 他人に幸せを与えられない
- 他人の喜びに嫉妬し、素直に喜べない
このような傾向があります。
このような考え方を持ってしまうと、外部に喜びや幸せを求めても心の枯渇感はいつまでも埋まらないという悪循環に陥ってしまいます。
その渇いた心を周りにどうにかして欲しくて、怒りの感情が生まれるのです。
【怒る原因④】心のゆとりがない

もう一つの原因は「心のゆとりがない」ということです。
ゆとりとは心の余白です。
精神的なゆとりがない人ほどすぐイライラしたり、怒りやすかったりします。
特に現代は心にゆとりを保ちづらい時代になっています。
インターネットやコンピュータの影響
- 処理しなければならない情報が増えた
- 間違いやミスが許されず、正確さが重視されるようになった
- 素早さが評価されるようになった
- スマホの普及で、自分と向き合う時間が減った
上記のように近年は時間や心の余裕が少なくなってしまっているため、怒りの感情が生み出されやすい時代なのです。
これまで述べてきた通り、怒りの感情は周りのせいでなく、自分が選んだ感情です。
つまり自身が満たされていれば、自他に対して寛容になることができます。
そしてこの怒りのしくみを理解することは、自分の感情をコントロールしたり、誰かのマネジメントをしたりするために必要不可欠なのです。
次のページではもともと生物に備わった機能である、自分を守るための怒りについて学んでいきましょう。