前回は、「怒りの感情は周りのせいでなく自分が選んだ感情」と言う視点が、自分の感情をコントロールしたり、誰かのマネジメントをしたりする際に役立つことを学びました。
今回は、怒りが自身を守る役割を担っていることを学んでいきましょう。
まずは、なぜ怒ると身を守ることに繋がるのか、動物の縄張りの例などをもとに見ていきます。

人は怒る生き物
なぜ人は怒ってしまうのでしょうか。
「怒らなければ楽しいだけなのに。」と思っている人も多いでしょう。
しかし人はもともと怒る生き物。
嬉しくなったり、寂しくなったり、緊張するのと同様、自然に生まれる感情の一つとして、「怒り」があります。
そして怒ることは必ずしも悪いことばかりではありません。
人は自分を守るために怒ることもあるのです。
自分を守るために怒る

自分を守ろうとしたときにも怒りの感情が生まれます。
これは、人間だけに限らず、実は動物も同じような理由で怒ることがあります。
動物も怒る
例えばシカの例で考えてみましょう。
シカは自分の縄張りに侵入してきた他の動物を見ると、怒って追い出そうとします。
なぜなら縄張りの中に自分が食べる餌があるからです。
他の動物に縄張りに入られたらえさを食べられてしまい、シカは何も食べられず死んでしまうかも知れない。
そのため、シカは本能的に自分を守るために怒るのです。
身や心を守るために怒る
これは人も同じです。
たとえば誰かから叩かれそうになったら「やめて!」と怒るはずです。
それは自分の身を守るためなのです。
また、誰かに馬鹿にされたときも「ひどい!」と怒りますよね。
それはあなたの心が傷つかないように、怒りが守ってくれています。
怒ると戦闘モードに切り替わる
例えば熊を例に説明していきましょう。
一頭の熊の縄張りに見知らぬ熊が入ってきたとき、縄張りを持っている熊は侵入してきた熊を追い出さなければなりません。
そうしなければ所有している縄張りを荒らされ、安全に暮らせなくなる可能性があります。
縄張りを持っている熊と侵入してきた熊が対峙したとき、
お互いにとって相手は危険を及ぼす相手なので、相手に対して「怒り」の感情を持ちます。
怒ったときの熊の体は戦闘態勢に入ります。
このとき熊の体の中では交感神経が優位になります。
- 脈が速くなることで全身に血液をたくさん送る
- 身体を緊張させ筋肉を硬くすることで、相手がいつ襲ってきても直ぐに立ち向かえるように準備する
- 筋肉を活発に動かすためには大量の酸素を得るために速く浅い呼吸になり、たくさんの酸素を取り込もうとする
このように、交感神経が優位に立つと体の内側にも様々な変化が起き、いわゆる戦闘モードに入るのです。
生物界の怒りの役割
動物は相手に自分が勝てると思えば、一瞬で相手に攻撃をします。
反対に相手が自分よりも強そうで全く勝ち目がないとわかれば、すぐさま逃げるのです。
「怒り」は、動物にとって「戦闘」か「退散」の2択です。
このように目前の敵に対し勝負するか、逃げるか選択することを「闘争・逃走行動」といいます。
例として熊の縄張りを挙げましたが、私たちが怒った時もこれと同じ反応が起こります。
人間も強い怒りの感情を感じたときには、とっさに戦うか・逃げるかのどちらかの判断をします。
例えば、カッとなって殴ってしまった場合やヤケ酒に逃げてしまった場合などが
考えられます。
力を発揮できる最高のコンディション
怒りの感情が湧き上がると、脈が速まり筋肉が硬くなることで緊張状態になります。
交感神経が高ぶり、興奮した状態になるのです。
実はこれにより、普段出せる以上の力を発揮することが出来ます。
怒りのエネルギーは、自分の持つ力を最大限に発揮するための源となるのです。
これは人間と動物どちらにも共通している能力です。
怒りの感情によって、交感神経が高まり、感覚が研ぎすまされて、不安が減るため、一部の経営者などはこの感覚をうまく活用することで、自身の能力を最大限に発揮しています。
人間だけが理性をもっている

動物と人間の違い
動物と人間の怒りの感情は、まるっきり同じ訳ではありません。
なぜなら人間は社会の中で生きているからです。
つまり動物は本能のみで生きますが、人間は本能だけでなく理性を兼ね備えているのです。
人間は知恵で生きる
かつての古代人は単身で戦っても敵わない大型動物に対して、仲間で知恵を出し合い武器を作り、作戦を練ることで狩猟に成功してきました。
人間が生き延びるためには、古来から人間同士で知恵を出し合うことが必要不可決だったのです。
人間社会はこのように知恵や理性があるからこそ成り立つといえるでしょう。
まとめ
怒る感情は、自分の身や心を守るために大切な役割を果たします。
生きている上で当たり前に生じる感情の1つといえるでしょう。
しかし動物のように本能そのままに、
腹が立ったら相手を罵倒したり、勝てないと感じたら逃げ出すような人と仲良くなりたいと思う人は少ないはずです。
つまり人間社会では、本能と理性のバランスに気をつけ、周りの人と円滑なコミュニケーションをとることが大切だといえます。
次のページでは、怒りにはどんな性質があるのかについて学んでいきましょう。