前回は相手に配慮する気持ちをもてば、怒りの感情は生まれないことを学びました。
今回は男女の怒り方の違いを、仕事での場面を例にみていきましょう。
また、怒りの男女差は、2種類のホルモンが影響しています。
そのホルモンと上手に付き合う方法も学んでいきましょう。

怒りは男女に差がある
大まかに言うと、
- 男性の怒り:攻撃的、決着を求める
- 女性の怒り:調和的、改善を求める
この違いはテストステロンとオキシトシンという2つのホルモンの作用によって、引き起こされます。
仕事の場面で上司が部下に叱る場合を例にして、詳しく見ていきましょう。
※なお、本ページの記載はあくまで男女のホルモンバランスによる傾向的なものです。性差により断定するものではありません。
男性の怒りは攻撃的

男性の上司が部下に対して叱る時、ストレートな言い方で、攻撃的に怒ります。
「どうして時間内にできないんだ!」「この部分は違うと何度言ったらわかるんだ!」このような言い方で直接的に問い詰めます。
問題点や指摘箇所をストレートにはっきりと伝える人が男性には多くいます。
率直に聞きたいことを聞き、白か黒かはっきりした結果を求めています。とても単純で、勢いのある感情的で攻撃的な怒りです。
女性の怒りは調和的

それとは反対に、女性の上司は遠回しな言い方をし、調和的に怒ります。
女性の場合、相手にわかって欲しいという気持ちが働くため、ダイレクトな言い方で責めるのではなく、ほのめかす言い方をします。
「この資料のこの部分はどうしてこういうように書いたの?」「あとは私がやるからもういいわ」
女性は間接的な言い方で怒る
女性の場合、あまり「どうしてできないのか!」とダイレクトに叱ることはありません。
相手が気付くように「あなたのこういうところができていないわよ」と、間接的に示しています。
男性のように相手を問い詰めて、白黒はっきりさせるのではなく、あえて部下が自分自身で気付く方向に持って行こうとします。
怒り方は男女で異なる

このように、怒り方は男女それぞれ異なります。では、その性差を理解した上で、アンガーマネジメントするにはどうすれば良いでしょうか。
それを知るためにはまず、男女の怒りの違いと深く関係しているホルモンについて理解することが大切です。
男女それぞれにホルモンがある
人間の脳内では様々なホルモンが分泌されていますが、男女では分泌されやすいホルモンが異なり、それにより様々な違いが生まれます。それでは男女の怒り方の違いの要因となる「テストステロン」と「オキシトシン」の特徴をみていきましょう。
テストステロン:男性的なホルモン
特徴
テストステロンは男性機能の維持や筋肉肥大などに関係するホルモンで、男性の場合には約95%が睾丸で合成されています。(残り5%は副腎。)その働きにより男性らしい体つきになったり、仕事に必要な集中力やリスク判断、決断力や闘争心にも影響すると言われています。
テストステロンの働き
- 不安などネガティブな気分を落ち着かせる
- 快楽、やる気を生成するドーパミンを促す
- 男性らしい身体つきや筋肉がつく
- 活き活きと活動できる
- 記憶力や集中力をつくる
- 興奮した状態になる(攻撃的になりやすい)
またテストステロンは男性だけのものと思われがちですが、女性の体内でも卵巣や副腎から分泌されています。血中テストステロン量は男性の5〜10%とごく少量ではありますが、活き活きとした生活に欠かせないホルモンとして、男女ともに重要な役割を果たしています。
闘争心のホルモン「テストステロン」
このように男性ホルモンの代表であるテストステロンは、興奮した状態を作り出しているといえます。
やる気や闘争心がみなぎるのは良いことですが、行きすぎてしまうと攻撃的になってしまう恐れもあるため、怒りをコントロールすることがより重要となります。
分泌させる方法
- 適度な運動をして筋肉を動かす(有酸素運動と筋トレ)
- 格闘技やアクション映画をみる
- バランスの良い食事(タンパク質や硫化アリル・システイン・亜鉛などの栄養素摂取)
- 十分な睡眠(副交感神経が優位になると分泌されやすくなる)
オキシトシン:女性的なホルモン
特徴
「愛情ホルモン」「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、脳内の視床下部で生成されます。出産時に子宮を収縮させるなどの働きを持ち、母乳の分泌にも関係があることが知られていますが、オキシトシンの効果はそれだけではなく、体の様々なところに下記のような作用をもたらします。
オキシトシンの働き
- 幸せな気分になる
- ポジティブになりやすい
- ストレスや不安な気持ちを落ち着ける
- 免疫力が高まる
- 他人を信頼する気持ちが高くなる(騙されやすくなる)
- 女性的な闘争心(部外者排除のための嫉妬)が強まる
テストステロンが女性にも重要であったのと同様に、オキシトシンも男性にとって大切なホルモンです。男性の場合も、大切な人や動物との触れ合いで分泌され、子供が生まれることでオキシトシンの分泌量が増加することがわかっています。
調和のホルモン「オキシトシン」
このようにオキシトシンには様々な効果が確認されており、周囲との調和をとったり信頼関係を大切にして子育てをしてきた女性には欠かせないホルモンです。
このホルモンの働きにより、男性のような攻撃的な怒りとは異なる、上記のような調和的な怒りの表現となります。
分泌させる方法
- 配偶者やパートナーとのスキンシップ
- 人に親切にする
- マッサージ
- ペットや動物とのスキンシップ
男女とも「テストステロン」と「オキシトシン」のバランスが大切
テストステロンが多すぎると、やる気や闘争心がみなぎりますが、周囲との調和を保ったり、幸福感を得にくくなってしまいます。反対にオキシトシンばかりあると、リラックスした気持ちでいれたり、協調性はありますが、主体性に欠け消極的になってしまいます。
以上のことから、テストステロンとオキシトシンはどちらが良い悪いはなく、バランスが重要です。
まとめ
今回は男性と女性の怒り方の違いを見てきました。男性は攻撃的に、思ったことをそのまま話します。それに対し、女性は調和を壊さないようほのめかすように話します。このような男女差の原因にはテストステロンとオキシトシンの2つのホルモンが関与しています。どちらか一方が良いというわけではなく、バランスが大切です。