前回までは、怒りを感じた時の対処法に関する話をしました。
今回からはさまざまな場面で使えるアンガーバランス・マネジメント術をお伝えしていきます。
まずLesson7では、子育て・子供に関する場面で考えてみましょう。
毎日の子育てにおいて「叱る」ということは欠かせません。
いくら、今日は叱らないでおこうと思っていても、子供は危険なことや悪さを必ずするものです。
そんな子育て中の方の多くはきっと
「どうしてこんなにすぐイライラしてしまうんだろう」
「今日は1日中、叱ってばっかりだったな」
こんなふうに思ったことがあると思います。
自分の中に沸き起こる「怒り」の感情をうまくコントロールすることで、
子育ての場面でも役立てることが可能です。
どのように考えていくことがポイントなのか、早速学んでいきましょう。
価値観の違いを認めるには
「子どもは、親が思うように行動すべき」と思っていませんか。
親の目線から見て、「このようにすべき」「こうした方がいいのに」と思うことは、必ずしも子供にとってもそうとは限りません。
親の価値観を子供に押し付けることは子供の反発を大きくさせます。
子供には子供の価値観がありますので、それを忘れないようにすることが大切なのです。
それでは実際に、叱った時や話し合った時の親子間の軋轢あつれきは、どのように対処すれば良いのでしょうか。
例えば子供が決まった時間に寝ないで遊んでいるとします。
こんな時、あなたならどうしますか?
「早く寝なさい!」と叱りますか?「何しているの?」と諭しますか?
明日も朝早くに学校に行かないといけないのだから、
早く寝た方がいいと考える親の価値観と、
今しかできないことをやり遂げたい子供の価値観は全く違います。
こんな時、両者が納得して問題を解決できるように、以下のステップを踏んでみましょう。
①価値観の差を理解する

親にとっては、早く寝たほうが明日の学校のためにも良いと思っても、
子どもにとってはその逆で、今早く寝るということよりも夢中でやり遂げたいことがあります。
こんな時はまず、親と子で価値観に違いがあることを理解することが大切です。
②子どもの価値観を認める

こんな時、あなたならどのように声かけをしますか?
×「早く寝ないといけないのは、わかるよね?」
このように声をかけるのはやめましょう。
まず、親の意見は親の意見として一旦置いておき、子どもの意見を受け入れた上で問いかけを行いましょう。
〇「すごく夢中で遊んでいるけれど、何をやっているの?」
このように、一度まずは子どもの意見を受け入れ、どの点に魅力を感じているのか、
また、どういった部分を大切にしているのかを聞いてあげるとよいでしょう。
まともな返答が無いかも知れませんが、ひとまずそれで大丈夫です。
問われたことに対し、考える行為に意味があります。
③親の価値観を話す

子どもの価値観を受け止めた上で、親の価値観を伝えましょう。
この時に注意して欲しいのは、子どもの価値観を否定しないことです。
×「いつまで遊んでるの!お母さんは、早く寝てほしいんだけど!」
〇「今作っているこの遊びもすごく楽しいと思うんだけど、早く寝ないと明日の朝困るよ。」
〇「楽しいのはわかるけど、明日の朝すっきり目覚めて学校に行きたければ、早く寝ないとね。」
このように、あくまで子どものやりたい方向性を尊重しつつ、
親の価値観を伝えることが大切です。
④価値観をすり合わせる

ここでは、お互いの意見を話して価値観をすりあわせます。
- 「これから何時に寝る?」
- 「どう思う?」
というように、イエスノーで答えるのではなく、答えのない問いをすることで、子どもは自分の事を真剣に考える事ができます。
そのため、答えられなくても大丈夫です。
考える事自体に意味があります。
イエスかノーで簡単に答えられる問いは、
子どもが受動的に答えることになってしまうので、
どうしても「親に従う」構図ができあがってしまいます。
あくまで子どもの意見主体で、親は子どものサポート、補佐的に軌道修正するようにするのが良いでしょう。
さらに、上手に価値観をすり合わせる方法として、相手の価値観を尊重しつつ、少しずつすり合わせる方法がおすすめです。
例えば先程の例で言うと
×「毎日これからは早く寝ようね」
このように、絶対にこうすべきという意見を押し付ける言い方では子供は全てを否定されたと感じてしまいます。
◯「どうしてもやりたいことがある日は少し起きていてもいいけれど、ない日は早めに寝ようね」
このように子供のやっていることも尊重することで、意見を聞き入れやすくなります。
価値観のすり合わせに苦戦した際にはこのような手法も使ってみましょう。
子どもと親であっても、価値観は違って当然
今回は子どもと親であっても、価値観は異なるということを解説しました。
怒りの感情をコントロールする前に、まず大切にして欲しい考え方です。
子どもに対してつい自分の思いを一方的に伝えてしまったり、命令してしまいますが、いくら子どもであっても価値観はそれぞれに違うということを忘れないようにしましょう。
次回からは、子育て中にイラッとしてしまった時、どうすれば怒りを抑えられるのかより具体的に学んでいきましょう。