前回は、保護者の抱える怒りの感情への対処法を学びました。
今回はあなたが教師の立場と仮定して、同僚や部下、上司など、同じ教師の立場の人からぶつけられる怒りの感情への対処法を学んでいきましょう。
今回は、保護者や子どもの愚痴ばかり言われるケースを例に見ていくことにしましょう。

子どもや保護者への愚痴ばかり言われる
教師というのはキャリアを積むにつれ、教育信念が確立していきますので、ある程度自信をもって指導にあたれるようになります。
しかし、それが時として怒りの原因になりことがあります。
「このやり方が正しい」「こうすべきだ」「私の考え方が正しい」といった固定概念が形成されてしまい、自分のものさしで誰かを評価するようになってしまいます。
長いキャリアを積んだ自信がかえって間違った捉え方を生んでしまいます。
上手くいかない場面に直面した時、「相手が全て悪い」と、問題の責任を相手に押しつけ、ずっと怒りっぽくなってしまうのです。
ネガティブな感情は伝染しやすい

イライラしている人が周りの人に同意を求めるのは、自分の怒りが正しいことを認めて欲しいからです。
自分のネガティブな気持ちを周りに広めると、負の感情が周囲に広まってしまうのも、怒りの性質の1つです。
ネガティブな感情を伝染させないためには、相手の怒りに流されないことが重要なのです。
「タイムアウト」で、怒りに飲まれないようにする

このように、他人の怒りの感情に影響されそうな場合、「タイムアウト」という方法が有効です。
これは、怒りの対象から一旦離れて、自分が怒りに飲まれるのを防ぐテクニックです。別名、退去戦略ともいいます。
ポイントは、相手に戻る時間を伝えて離れることです。
そしてタイムアウト中は、リラックスできることをしましょう。
例えば、散歩やストレッチ、有酸素運動、ヨガ、癒やされる音楽や動画を観るなどです。交感神経が優位になって興奮してしまうことは避けましょう。
例えば、激しい運動や、運転、飲酒、怒りなどのネガティブなことを思い出すことです。
では実際に、あなたが先生Bだと仮定して、先生Aから怒りをぶつけられた場合の対話例を見ていきましょう。
対話例
- 先生A「ねえねえ!〇さんの親御さん、教育相談の案内をしたのに断られたのよ!一番来て貰わないと困るのに!保護者会にも学校行事にも顔を出さないじゃない?ねえ!どう思う?」
- 先生B「大変ですよね。」
- 先生A「そうなの。今の親は特に、全部学校任せ。そこにもイライラする。親はもっと子どもの面倒をみるべきよ。」
- 先生B「すみませんが先生。10分ほど席外しますね。その後もう一回話しましょう。」
- 〈少し時間をおいてタイムアウト〉
- 先生B「先生。親御さんに、その子の頑張っている姿を伝えつつ、『お子さんの成長には親御さんの協力が必要です』と伝えてみてはいかがでしょうか。」
このように、一旦その場から離れて気持ちを落ち着けることで、相手の怒りの感情に飲まれることなく、ネガティブな感情が伝染するのを防ぐ事ができます。
怒りを受け取る前に、1度距離を置きましょう
怒りの感情は伝染します。まずはこの特性をしっかりと認識しましょう。
もし相手の怒りの感情に共感したとしたら、たしかにその愚痴を言っているときは楽しいかも知れません。
しかし、それで保護者や子どもたちの行動が変わるわけではありません。
その結果、自分自身もイライラしてしまうことになります。
怒りの感情が伝染して大きくなると、仕事のパフォーマンスが下がるだけでなく、子どもたちに当たるようにもなってしまうかもしれません。
そのような事態を避けるためにも「怒りの感情を受け取る前に、その場から一旦距離を置く」ことが大切なのです。
次回は、教師側が抱える保護者への怒りの対処法を学んでいきましょう。