前回はアンガーバランス・マネジメントが、広い分野で役立つということを学びました。
今回は、当講座の考え方の基盤であるアンガーマネジメントの歴史について解説していきます。
全てはセネカの研究から始まった
アンガーマネジメントのはじまりは、1970年代のアメリカが発祥であるとLesson3-1で伝えましたが、
実はそれよりももっと前に「怒り」について研究をまとめていた学者が存在します。
古代ローマ哲学者セネカは「怒り」の研究を極め、怒りを「復讐へと突き進んでいく心の激動」と定義し、
怒りは一時的な感情なので待てば収まることを説きました。
その後現代になると、ドナルド・マイケンバウムは「ストレス免疫訓練法」を開発し、不安の治療に成功しました。
のちにこの「ストレス免疫訓練法」を用い、レイモンド・ノヴァコが1970年代にアンガーマネジメントを生み出したのです。
ノヴァコが、アンガーマネジメントを広めた第一人者
このように、ノヴァコが現在のアンガーバランスマネジメントを広めた第一人者と言えるのですが、
ノヴァコは、怒りの感情が全て悪いわけではなく、「怒りと攻撃の解釈が混乱することにより、怒り=破壊的な力」と捉えられてしまっていると解釈しました。
また、怒りには良い効果が大きく分けて3つあるとも述べています。
ノヴァコが提唱した、怒りの良い効果3つ
- 事態の深刻さを示すサインとなる:怒りの感情が生じると、緊張や興奮、動揺などが起こるが、この精神状態が事態の深刻さを示すサインになる
- ありのままの感情を表せる:健全な人間関係であれば、怒りの感情を表すこともできるし、その他のネガティブな感情も伝えることができる。その結果、相手との関係はより深まる
- 活動の原動力:ほとんどの社会活動は、怒りが原動力となっている
以上からノヴァコは、怒りは必ずしも悪いものではなく、正しく捉えることで良いものになりえると説きました。
1970年代以降、多くの国や人に広まっていく

そして1970年代以降、
- 患者の精神療法
- 慢性的な怒りをもった発達障害を抱えている人
- ストレスがかかりやすい警察官・法務執行官
などを対象に、アンガーマネジメントが行われてきました。
その後、アメリカやマレーシア、イランなど多くの国の災害やテロなどの危機に対処する教育としても発展してきました。
現在では教育分野だけでなく、ビジネスやスポーツ、医療・福祉、夫婦や家庭内のカウンセリングにもアンガーマネジメントが取り入れられています。
「怒り」の正しい対処は、万国共通の課題
アンガーマネジメントは外国からきた言葉で、最近になって日本でもよく知られるようになりましたが、
「怒りの感情を正しくコントロールし、対処すること」は万国共通の課題であるといえます。
しかし、同じ出来事が起こっても、国によって捉え方は異なりますし、
頻度や度合い、表出の仕方も千差万別です。
したがって、文化的な背景を視野に入れつつ、日本に適したアンガーマネジメントを構築していくことが大切だと言えるでしょう。
また、最近アンガーマネジメントが広く知られるようになったのは、
アメリカのある制度がきっかけだったのです。
次回は、アンガーマネジメントが近年注目されるようになるまでの流れを学んでいきましょう。